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大阪地方裁判所 昭和44年(わ)680号 判決 1969年10月24日

本籍

大阪市西区北堀江上通三丁目六五番地

住居

大阪府岸和田市岸城町一八九七番地の一

会社役員

柴橋秀彦

昭和四年三月三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官後藤一善出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月および罰金一一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶与する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和三四年一月から同四二年八月まで手形割引業を営む株式会社日証の外務員として勤務していた者であるが、自己の営業としてなした手形、小切手の割引、貸金等により得た所得を秘匿し、所得税を免れようと考え、

第一  昭和四〇年度分の所得金額は二、四四五万六、三二〇円、これに対する所得税額は一、一七二万七、三〇〇円であるのに、右手形等の割引、貸金等の取引に際して他人名義を使用して自己の取引でないように仮装し、また右割引によつて得た割引料収入金を除外して経理する等の不正行為により、右所得金額中二二八二万七、八四八円を秘匿したうえ、同四一年三月一四日岸和田市岸城町一、七四六番地の四岸和田税務署において、同署長に対し、同四〇年度分の所得金額が一六二万八、四七二円、これに対する所得税額がない旨過少に偽つた所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税一、一七二万七、三〇〇円を免れ、

第二  同四一年分の所得金額は三、八七三万二、八九九円、これに対する所得税額は一、九九四万一〇〇円であるのに、前同様の不正行為により、右所得金額中三、三一七万一、五一〇円を秘匿したうえ、同四二年三月四日前記岸和田税務署において、同署長に対し、同四一年分の所得金額が五五六万一、三八九円、これに対する所得税額が七〇万四、〇四〇円である旨過少に偽つた所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税一、九二三万六、〇六〇円を免れ、

第三  同四二年分の所得金額は四、八二八万五、二八八円、これに対する所得税額は二、六八六万一、七〇〇円であるのに、前同様の不正行為により、右所得金額中三、九九七万七、〇二〇円を秘匿したうえ、同四三年三月一五日前記岸和田税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が一、二三〇万八、二六八円、これに対する所得税額が四六八万八、七〇〇円である旨過少に偽つた所得税確定申告書を提出し、よつて同年分の所得税二、二一七万三、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示の各事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、収税官吏の被告人に対する各質問てん末書(合計一五通)

一、被告人作成の各供述書(合計一一通)

一、被告人作成の「上申書」と題する書面

一、大蔵事務官作成にかかる被告人の昭和四〇年ないし四二年分の所得税確定申告書についての各証明書

一、収税官吏の次の者らに対する各質問てん末書

森山嘉夫 今田勝之(44.1.18付の分)

岸田成胤 柴田泰司 中村義孝

安野潔 柴谷敏喜 川西茂

木野将央 山口昇

一、次の者ら作成の各供述書

山口昇 竹田一雄 杉岡進

一、押収の割引計算書六冊(昭和四四年押第四五〇号の1)

一、同振替(入金)伝票綴一二冊(同号の2)

一、同手形割引記入帳一冊(同号の3)

一、同計算書メモ二枚(同号の4)

一、同振替伝票綴一四冊(同号の5 7)

一、同リーフレツト八枚(同号の6)

(法令の適要)

被告人の判示の各行為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するので、所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は、刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により、犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により、各罪に所定の罰金額を合算し、その刑期および罰金額の範囲内において、被告人を懲役八月および罰金一、一〇〇万円に処し、同法一八条により右罰金を完納することができないときは、二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 井上清)

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